
【この記事はこんな方に向けて書いています】
✅ SES企業で働いているけど、自分のお給料がどう決まっているのか知らない…
✅ これからSES企業への就職・転職を考えている
✅ 自分の「単価」や「市場価値」がどれくらいなのか、正直気になる!
✅ エンジニアとして、もっと賢くキャリアアップしていきたい!
「自分が常駐しているクライアントは、一体いくら自社に支払っているんだろう?」 SESとして働くエンジニアなら、一度はこんな風に考えたことがあるのではないでしょうか。
自分の給与明細は見れても、その源泉となる「クライアントとの契約金(単価)」を知る機会はほとんどありませんよね。 この「お金の流れ」が不透明だと、自分の評価が正当なのか、今の会社で働き続けていいのか、不安になってしまうのも当然です。
この記事では、そんなモヤモヤを5分で解消します! 結論から言うと、SESのビジネスモデルは至ってシンプル。その仕組みさえ理解すれば、自分の給与の根拠がわかり、今後のキャリア戦略も格段に立てやすくなります。
この記事を読めば、SES業界の「お金の流れ」が図解レベルでスッキリ理解でき、あなたが今後どう行動すべきかが見えてきますよ。
結論:SESのビジネスモデルは「差額」で成り立っている
まず、結論からお伝えします。 SES企業の利益は、「クライアントが支払うお金」と「エンジニアに支払うお金」の差額から生まれています。これを業界用語で「マージン」と呼びます。
このお金の流れを、登場人物と共に見てみましょう。
🏢 クライアント企業 (エンジニアを必要としている会社)
↓
💰 月額の契約金 (単価) をSES企業に支払う
↓
🏢 SES企業 (あなたが所属する会社)
↓
① 会社の利益や経費 (マージン) を確保する ② 残りをエンジニアの給与として支払う
↓
👨💻 エンジニア (あなた)
とてもシンプルですよね。 つまり、あなたの給与の元になっているのは、クライアントがSES企業に支払っている「単価」なのです。 この単価から、会社の取り分である「マージン」が引かれ、残りがあなたの取り分になる、という構造です。
では、この「単価」「マージン」、そしてあなたの取り分を示す「還元率」について、具体的な数字を交えながら深掘りしていきましょう。
【図解】お金の流れを3ステップで完全解説
ここでは、仮にクライアントがあなたのスキルに対して月額80万円の単価を支払っていると仮定して、お金の流れをシミュレーションしてみましょう。
ステップ1:クライアントからSES企業へ「単価」が支払われる
まず、あなたが働くクライアント企業が、あなたの労働力の対価として、所属するSES企業に契約金を支払います。これが単価です。
【クライアント企業】 — 月額80万円(単価)—> 【あなたの所属するSES企業】
この単価は、あなたのスキル、経験年数、担当する業務内容、そしてSES企業の営業力などによって決まります。若手エンジニアであれば月額60万円前後、経験豊富なリーダーレベルであれば100万円を超えることも珍しくありません。
ステップ2:SES企業が「マージン」を確保する
SES企業は、受け取った単価80万円の全てをあなたに支払うわけではありません。 会社を運営していくための経費や利益を、ここから確保する必要があります。これがマージンです。
一般的に、SES企業のマージン率は30%~40%程度と言われています。 仮にマージン率が35%だとすると、
80万円 (単価) × 35% = 28万円 (マージン)
この28万円が、SES企業の取り分となります。 「え、そんなに取られるの?」と感じるかもしれませんが、このマージンには、以下のような様々な費用が含まれています。
- 営業担当者の人件費:あなたの代わりに仕事を見つけてきてくれる営業担当者のお給料です。
- 本社スタッフの人件費:経理や人事など、バックオフィス業務を担う社員のお給料です。
- オフィスの家賃や光熱費:本社を維持するための費用です。
- 会社の社会保険料負担:あなたの社会保険料の半分は、会社が負担しています。
- 会社の利益:事業を継続し、成長させていくための利益です。
こうして見ると、マージンは会社を維持・成長させるために不可欠なものだとわかりますね。
ステップ3:残りが「還元」され、エンジニアの給与になる
単価からマージンが引かれた残りのお金が、いよいよあなたの取り分となります。
80万円 (単価) – 28万円 (マージン) = 52万円
この52万円が、あなたに還元される金額の原資となります。 ここから、あなたの月々の給与や賞与、会社が負担する社会保険料などが支払われるわけです。
この、単価に対して、どれだけの金額がエンジニアに還元されているかを示す指標を還元率と呼びます。 この例で言えば、還元率は65%(52万円 ÷ 80万円)となります。
用語 | 意味 | この例での金額 |
単価 | クライアントがSES企業に支払う月額の契約金 | 80万円 |
マージン | SES企業の取り分(経費+利益) | 28万円 (マージン率35%) |
還元額 | エンジニアに還元される金額の原資 | 52万円 |
還元率 | 単価のうち、エンジニアに還元される割合 | 65% |
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この「還元率」こそ、あなたがSES企業を選ぶ上で最も重要視すべき指標の一つなのです。
なぜSESのビジネスモデルは成り立つのか?
この「マージン」を取るビジネスモデルが、なぜIT業界で広く受け入れられているのでしょうか。 それには、クライアント、SES企業、エンジニアの三者それぞれに理由があります。
企業(クライアント)側の事情:必要な人材を、必要な時に、必要なだけ
最大の理由は、IT業界の深刻な人材不足です。 経済産業省の調査では、2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足すると予測されています。
(出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」)
このような状況下で、企業が正社員のエンジニアを自社で採用し、育成するのは非常にコストと時間がかかります。 そこでSESを活用すれば、
- 採用コストや教育コストをかけずに即戦力を確保できる
- プロジェクトの繁閑に合わせて柔軟に人員を調整できる
- 自社にない専門スキルを外部から補うことができる
といったメリットがあるため、多くの企業がSESを利用しているのです。
SES企業側の事情:安定したビジネス基盤
SES企業にとっては、エンジニアという「資産」を企業に提供することで、安定した収益を得ることができます。自社で大規模な開発設備を持つ必要がなく、比較的少ない資本で事業を始められるという特徴もあります。IT人材の需要が供給を上回っている限り、非常に安定したビジネスモデルと言えます。
エンジニア側の事情:キャリアの入り口と多様な経験
エンジニアにとっては、未経験からでもIT業界に入りやすいという大きなメリットがあります。また、様々な業界のプロジェクトに参画できるため、短期間で多様な技術や業務知識を身につけることが可能です。「まずは経験を積みたい」と考える若手エンジニアにとっては、魅力的な選択肢となり得るのです。
エンジニアが給与を上げるための2つの戦略
このビジネスモデルを理解したあなたが、自身の給与を上げるために取るべき戦略は、大きく分けて2つです。
戦略1:「単価」そのものを上げる
あなたの給与の源泉は、クライアントが支払う「単価」です。 この単価を上げることが、給与アップの最も直接的な方法です。
単価は、あなたの市場価値そのもの。では、どうすれば市場価値を高められるのでしょうか。
- 需要の高いスキルを習得する:クラウド(AWS, Azure)、AI・機械学習、データサイエンス、セキュリティ分野などは、特に需要が高く、高単価に繋がりやすいです。
- 上流工程の経験を積む:プログラミングだけでなく、要件定義や設計といった上流工程のスキルを持つエンジニアは、より高く評価されます。
- マネジメント経験を積む:リーダーやマネージャーとしてチームを率いた経験は、単価を大きく引き上げる要素になります。
常に市場の動向をチェックし、自分のスキルをアップデートし続ける姿勢が重要です。
戦略2:「還元率」の高い会社を選ぶ
同じ単価80万円でも、還元率60%の会社と75%の会社では、あなたの取り分は大きく変わります。
- 還元率60%の会社:80万円 × 60% = 48万円
- 還元率75%の会社:80万円 × 75% = 60万円
その差は、なんと月額12万円。年収に換算すれば144万円もの差になります。 近年、エンジニアの獲得競争が激化していることから、還元率の高さをアピールするSES企業が増えています。中には、還元率80%以上を謳う企業も存在します。
会社のウェブサイトで還元率を公開していたり、面接で単価や還元率についてオープンに話してくれたりする企業は、透明性が高く、エンジニアを大切にしている可能性が高いと言えるでしょう。 転職を考える際は、給与額面だけでなく、この「還元率」を必ずチェックするようにしましょう。
まとめ:ビジネスモデルを理解し、賢くキャリアを築こう
今回は、SESのビジネスモデルと、エンジニアが知るべきお金の流れについて解説しました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいします。
- SESの利益は、クライアントが払う単価とエンジニアに払う給与の差額(マージン)で成り立つ。
- エンジニアの取り分は、単価に還元率を掛け合わせた金額がベースになる。
- 給与を上げるには、「単価を上げる」努力と、「還元率の高い会社を選ぶ」という視点が不可欠。
SESの仕組みは、決して複雑なものではありません。 このお金の流れを正しく理解することで、あなたは自分の市場価値を客観的に把握し、会社に正当な評価を求めるための交渉材料を持つことができます。
これからは、ただ与えられた業務をこなすだけでなく、自分の価値がいくらで、それがどう給与に反映されているのかを意識してみてください。 その視点を持つことが、エンジニアとしてより豊かで満足のいくキャリアを築くための、大きな一歩となるはずです。
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