
【この記事はこんな方に向けて書いています】
- 社内のIT化・DX化を進めたいが、何から手をつければいいか全く分からない経営者の方
- とりあえず流行りのITツールを導入すれば、業務が劇的に改善すると思っている方
- 社員のITリテラシーが低く、新しいことへの抵抗感が強いと、社員のせいにしている方
- IT化を「コスト」としか見なせず、その本質的な価値を理解できていない方
「ウチも、そろそろ本格的にIT化しないとまずいと思ってまして…」「何か良いツール、ありませんかね?」「先生なら、ウチみたいなアナログな会社を、どうやって変えてくれますか?」。DXという言葉が一人歩きし、多くの経営者の方が、まるで魔法の杖でも探すかのように、私に具体的な解決策を求めてきます。
そんな時、私はこう答えるかもしれません。「私があなたの会社で最初にやるのは、究極的には“何もしない”ことです」と。がっかりしましたか?「高い金払って、何もしないとはどういうことだ!」と怒りたくなりましたか?しかし、これこそが、あなたの会社のIT化を、単なる“無駄金”で終わらせず、本物の成功に導くための、唯一にして最強のアプローチなのです。今回は、その「何もしない」本当の意味について、お話しします。
私は、あなたの会社にツールを一切導入しない
まず、大前提としてご理解ください。私は、あなたの会社に、いきなり何か新しいITツールを導入することは絶対にしません。
なぜなら、ほとんどの中小企業が抱えている問題の本質は、「ツールがないこと」ではないからです。問題の根源は、あなたの会社の「ぐちゃぐちゃで、非効率な、属人的な業務プロセス」そのものにあります。その、混沌としたアナログ業務を、そのまま最新のITツールに置き換えたところで、何が起きると思いますか?それは、単に「非効率がデジタル化される」だけです。むしろ、新しいツールを覚える手間が加わり、現場はさらに混乱し、生産性はかえって低下するでしょう。ゴミを、ピカピカのゴミ箱に移し替えているのと同じことです。
私がやるのは、ひたすら「聞く」ことと「観察する」こと
では、私は何をするのか。私の最初の仕事は、あなたの会社の「優秀な探偵」になることです。社長であるあなたに、そして現場で働く社員一人ひとりに、ひたすら話を聞きます。そして、現場の業務を、一日中、黙って観察します。
「この報告書は、一体誰が、何のために作っているのか」「なぜ、この承認のために、3人ものハンコが必要なのか」「あのベテラン社員の頭の中にしかない、暗黙のノウハウは何か」。そうやって、あなたの会社の業務に潜む「無駄」「非効率」「属人性」という名の“犯人”を、一つひとつ特定していくのです。経済産業省が発表しているDXレポートでも、多くの企業のIT化が失敗する原因として、この「既存業務プロセスの見直し不足」が挙げられています。ツール選定より、この地道な現状把握の方が、100倍重要なのです。
「IT化」の前に、まず「業務の標準化」という名の掃除
犯人が特定できたら、次にやるべきは、IT化ではありません。業務プロセスそのものの「大掃除」と「整理整頓」、つまり「業務の標準化」です。
人によってやり方がバラバラな業務を、誰がやっても同じ品質とスピードでこなせるように、最も効率的な一つの「型」に統一する。目的の分からない帳票や会議を、一つ残らず廃止する。ハンコを押すためだけに出社するような、バカげた習慣を根絶する。この「アナログの負債」を徹底的にそぎ落とし、筋肉質な業務プロセスを構築する。この大掃除が終わって、初めて私たちは、スタートラインに立てるのです。「では、この美しく標準化された業務を、さらに高速化・自動化するために、どんなツールが最適か?」と。
結論:主役はツールではなく、あなたと社員です
もうお分かりですね。社内IT化の主役は、キラキラした最新のITツールではありません。これまで非効率な業務に耐えてきた「社員」であり、その変革の先頭に立つ「経営者」である、あなた自身です。
私の仕事は、便利なツールを売り込むことではありません。あなたたち自身が、自分たちの業務の問題点に気づき、自分たちの手で改善していけるように、その「思考のフレームワーク」と「実行のプロセス」を、あなたの会社にインストールすることです。ツールは、そのあとについてくる、ささやかなオマケに過ぎません。
さあ、社長。IT化という名の、あなた自身の会社の「大掃除」、始める覚悟はできましたか?
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